怪獣大海戦

「ゴジラ200X・怪獣大海戦」page1

大戸島 ― そこは、昭和29年初めて日本にゴジラが上陸した場所であった。
しかし、同じ年の秋、突然の海底火山活動の影響により島の殆どは海に没してしまっていた。
かつて大戸島があった場所は「大戸礁」と名づけられ、海に没した島に因する複雑な海流によ って、
船の航行に難を極める海域として船乗りたちに恐れられた。

海自の潜水艦「ゆきしお」は、この海域近くを航行中に正体不明の巨大な「何か」に遭遇する。
ゆきしおの追跡を振り切ったその「何か」を、ゆきしおの艦長は「ゴジラ・ゴースト」として報告した。
ゴジラが東京湾で倒されて以来、あのような巨大な怪物が日本を襲うことはこの50年間ほど1度も
無かった。米軍との共同で数回に渡りビキニ諸島海域の調査も行われたが、ゴジラの同族を発見
することは無かった。
しかし、自衛艦(主に潜水艦)が海の中で「巨大な何か」に遭遇したことが2度あり(昭和37年、
昭和59年)、政府・防衛庁はゴジラの脅威を完全には拭い去ることが出来ないでいた。
そして平成1×年のこの日、3度目の遭遇が発生したのだった。

海に沈んだ大戸島を民俗学的見地から研究している若き民俗学者・新田は、都庁に保管されて
いる大戸島の資料の中から古文書を見つけ出す。
その古文書には、平安の頃、大戸島の近海に突如大爆発が起こり、島の大半を飲み込む大津波
が起きたことが記されていた。
新田は「ゴジラ=呉爾羅」伝説とは異なるその記述に興味を覚え、かつての大戸島ゴジラ災害の
生き残りである新吉老人に会いに行くのだった。
しかし、新吉老人も幼少の頃に島の古老から聞いた大戸島昔語りの中にそのような話は無かった
事を新田に伝えるのだった。

防衛庁内には、ゴジラ対策の為に防衛庁長官の直轄として設けられた部隊があった。
現在の責任者の名をとって「國生支隊」と呼ばれるその部隊は、陸海空どこの自衛隊からも独立
した、特別なポジションに置かれていた。
しかし、ゴジラ(のような災害をもたらす巨大生物)が昭和29年以来1度も姿を現していない事から
「防衛費の無駄遣い」と陰口を叩く者も防衛庁内には少なくなかった。
この國生支隊に所属する女性自衛官・河合は、ゆきしおが遭遇した「ゴジラ・ゴースト」を追跡調査
する任を与えられハイテク調査船・よこすかに搭乗する。

よこすかが大戸礁海域を調査航行することを知った新田は、大学のコネクションを駆使して、どうにか
これに同行することに成功する。
今回の調査航行の中で、よこすかに搭載された海底調査艇「しんかい」によって、海に沈んだ大戸島
の変貌を調査する任務が含まれていたのだ。

大戸礁海域へ向かう途中、よこすかのソナーに巨大物体が捉えられる。
河合はこの巨大物体を追跡調査するよう調査チームに依頼するが、新田がこれに反対する。
新田は大戸島調査をなんとしても実施したかったのだ。
鯨か何かだと主張する新田と、河合は激しく対立した。新田もまた、ゴジラのような怪物がもう一匹
いることなど考えもしていなかった。
その時、よこすかを激しい振動が襲った。何の前触れも無く始まった海底火山の活動に、よこすかは、
巨大物体の追跡や大戸島調査どころではなくなった。
この時、河合に倒れかかってく る調査機材を身を呈して防いだ新田は傷を負ってしまう。
水蒸気爆発の爆煙の後に、海上に噴煙とともにマグマが吹き上がった。やがてそれは冷え固まり
溶岩ドームが形成されていった。
運良く火山活動から逃れたよこすかは、安全海域からその様子をデータにとっていた。

止む無く本来の仕事を一時中断した河合は、その間、一人大海原を哨戒していた。
偶然新田と二人で甲板にいたときに、河合は溶岩ドームに奇妙なものを発見する。
ドームから突き出すように現れたそれは、明らかに溶岩塊とは異なる色・形状をしており、時折
陽光の反射で鈍い黄金色に光り輝いていた。
その不思議な岩塊はよこすか調査チームの興味を大いに引いたが、活動を続ける海底火山の
ために直接の調査は不可能であった。

大戸礁海域に現れた溶岩ドームは、「大戸島再浮上!」とセンセーショナルな扱いでマスコミを
賑わせた。そしてマスコミのヘリのTVカメラに捉えられた黄金色の岩塊はそれ以上に世間の興味
を掻きたてたのだった。
「かつて人類が発見したことが無いほどの黄金を含んだ岩塊である」と無責任な噂が流れ、ある
商社がスポンサーとなったTV番組のクルーたちが船を仕立てて、海上保安庁の海上封鎖を無視
して溶岩ドームに近づいていった。
TVクルーたちは火薬式の銛をいくつも岩塊に打ち込み、これを牽引して岩塊を溶岩ドームから
引き剥がそうとしていた。

嵐となった夜、TVクルーを乗せた船は闇の中で黄金色の岩塊の謎の発光現象を目撃する。
そして、岩塊から現れた巨大な生き物に襲われた船はあっという間に爆沈してしまうのだった。
同じく発光現象を目撃したよこすかの新田と河合は、割れた岩塊の欠片が船上に降り注ぐ中、
海上の火柱を見て危険を悟る。
溶岩ドームの上に鎮座したその巨大生物は、いくつかの発光器官を備えた昆虫とも爬虫類とも
言えない未知の生物であった。
巨大生物現るの報を受けた海上保安庁と海上自衛隊は直ちに第一級警戒態勢に入った。
よこすかは内地に戻り、河合は巨大生物対策のために防衛庁へ、新田は大戸島の古文書と
謎の生物との関連が気に懸かり、大学へと戻っていった。

新怪獣と海上自衛隊の艦艇群は睨み合いを続けていた。
新怪獣は何かを待つかのようにドームの上に鎮座をし続け、警戒行動以上の命令が出されて
いない以上、自衛艦は捕獲も攻撃も出来 ないままでいた。
その時、イージス艦きりしまのレーダーに海中を進んでくる巨大な何かが捉えられた。
潜水艦の魚雷攻撃をかわして海上に現れたそれは、間違いなく二体目のゴジラであった。
対峙した二体の怪獣はお互いを威嚇しあった。
成す術の無い自衛艦隊は二体の怪獣の行動を見守り続けるしかなかった。
最初に攻撃を仕掛けたのはゴジラだった。背びれが蒼白く光ると放射能火炎が新怪獣に
向かって放たれた。
だが、新怪獣は背中から現れた6枚の羽根を激しく羽ばたかせると、火炎をかわして空中へと
舞い上がった。
放射能火炎の直撃を受けた溶岩ドームは吹き飛び、再びマグマが海上に吹き上がった。
危険を察した自衛艦隊はこの海域を離脱し、再結集し陣形を整えるために浦賀水道へ向かった。

ゴジラの火炎攻撃をかわした新怪獣はそのまま飛行を続け、東京へ向かっていた。
これに対し三沢の空自基地よりF−15が迎撃に飛び立つ。
程なく浦賀水道上空で怪獣とF−15との空中戦が展開された。
怪獣は巨体に似合わぬ機動性を有し、サイドワインダーを難なくかわすと空中で急制動をかけ
F−15一機を葬り去った。
怪獣はついに東京湾上空にさしかかり、追跡するF−15と、高射隊から発射されたパトリオット
をも破壊すると、悠然と房総半島の放牧地へ降り立った。

一方、ついにその姿を現したゴジラに対し迎撃体制に入った自衛艦隊は浦賀水道でゴジラを
迎え撃とうとしていた。
潜水隊群が海中でゴジラを追い、水上艦隊の砲撃とミサイル攻撃がゴジラに向けられた。
だが、 海中のゴジラの行動や機動性について何の情報も無い自衛艦隊は、ゴジラに決定的な
ダメージを与えることが出来ないでいた。
逆にゴジラの火炎攻撃により数隻の艦が行動不能に陥ってしまった。
だが、しばらくの戦闘の後、ゴジラは再び海底の闇の中に姿を消すのだった。

支隊に戻った河合はゴジラともう一体の怪獣対策の渦中に翻弄されていた。あくまでゴジラ迎撃に
固執する立見一尉(國生支隊のメンバーで、河合の上官)は、新怪獣対策を第一にと主張する
河合を謹慎処分にする。
立見は、自身のメンツと支隊の存在意義のために、ついに姿を現したゴジラに対し病的なまでの
執着心を燃やしていたのだ。

大学に戻った新田が向かったのは自身の研究室ではなく、宇宙地質学の研究者・中島のところ
だった。
新田は持ち帰った、あの岩塊の欠片を中島に渡し分析を依頼する。 新田は古文書に記された
大爆発の謎を解くヒントがこの欠片にあると睨んでいた。
だが、その結果を聞く前に、新田はTVニュースの画面に映った河合を見つける。
謹慎処分を受けた彼女は単独で房総半島の怪獣の元へ向かっていたのだ。
河合のことが気にかかる新田は、彼女を追って房総半島へ向かう。


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