怪獣大海戦

「ゴジラ200X・怪獣大海戦」page2

房総半島の怪獣の周りではおかしな現象が起きていた。
未知の生物に怯えていい筈の動物たちが自ら進んで怪獣の前に歩み出ていたのだ。怪獣はその
動物たちを捕食していた。
陸上自衛隊は怪獣に対する攻撃よりも付近住民の避難を最優先とし、救助活動に従事していた。
救護キャンプで怪我人の手当てを手伝う河合と再会する新田。
その時、怪獣は再び飛び立ち、今度は都心へと向かっていくのだった。

怪獣が飛び立った後を調査する化学防護隊と合流した河合と新田は、化防隊の隊員から、現場
にフェロモンに似た誘引物質があることを知らされる。
そこへ中島からの岩塊の欠片の簡単な分析結果が新田に報告される。あの岩塊には宇宙から
飛来したことを示すいくつかの証拠があった。 新田は怪獣を追って東京へ向かう車中で、古文書
にあった大爆発の記述を隕石落下の様子を現 したものとし、その隕石があの怪獣を運ぶカプセルの
役割をしていたという仮説を立てる。
河合はこれに対し荒唐無稽な話だと異議を唱えるが、他の仮説が考えられないことを新田に指摘され
渋々新田の意見に同意する。

飛行する怪獣は東京上空にその姿を現すと、白く大きく目立つ建造物「東京ドーム」の上に降り立った。
ドームの屋根は怪獣が乗ると同時に大きく弾け、人工芝のグラウンドの上に布切れのように広がった。
必死で避難する人々、そして警察・消防・自衛隊が彼らの保護・誘導に当たっていた。 ところが突如、
人々の一部が避難を止め、怪獣に向かって歩み始めた。自衛隊員たちも任務を忘れたかのようにこの
人々の群れに加わってしまう。
動物性蛋白を主な餌とする怪獣は、誘引物質を放ち、更に発光器官の明滅により、餌となる生物を
自らの元へ誘い出す習性を持っているという仮説を化防隊から知らされた河合は、市ヶ谷の防衛庁へ
向かう。

河合はドームに陣取っている怪獣の危険性を知らせようとするが、怪獣を追って日本に姿を現す筈の
ゴジラを倒すことだけを願う立見によってその行動を阻止されてしまう。
立見は既に化防隊からの報告を握りつぶしていた。
果たして、再びゴジラは観音崎沖にその姿を現すのだった。 自衛艦隊がゴジラの東京湾内進入を防ぐ
べく決死の攻撃を敢行する。海上自衛隊始まって以来の本格的海戦がここに開始されたのだった。
支隊の責任者・國生も、旗艦たちかぜに乗艦し、 この戦いに加わっていた。
かつてゴジラ上陸によって甚大な被害を受けた経験から、ゴジラの上陸そのものを阻止するという観点から
対ゴジラ攻撃案は考え出されていた。しかし、それはシーレーンの封鎖をも意味し、海上輸送に輸出入
の殆どを頼っている日本にとっては死活問題であり、ゴジラ撃退作戦は迅速を求められていた。

常軌を逸した立見は、河合の行動を阻止しようと彼女に銃を向ける。
だが、彼女に同行していた新田の活躍により反対に立見は伸されてしまうのだった。

河合からの警告を受けた政府・防衛庁は、消防隊による水の散布と空自による人工雨によってフェロモン
の呪縛から人々を救い出した。
そして間髪をおかず、陸上自衛隊による怪獣攻撃が実行に移された。都市における作戦行動だけに、
周囲に出来るだけ被害が及ばぬよう、という厳命の元、陸自の攻撃は正確に怪獣を狙った。
怪獣は自衛隊の攻撃により羽根の数枚を傷つけられるも、その巨体を再び空中へと持ち上げた。
完全な飛行体勢ではないものの、怪獣は海に向かって飛び立った。

ゴジラと海上自衛隊の戦いは壮絶を極めていた。いくつもの艦艇がゴジラの火炎攻撃によって犠牲に
なったものの、潜水艦と水上艦、そして航空戦力による波状攻撃はゴジラを少しずつ後退させていた。
旗艦たちかぜの司令部はゴジラ攻撃に効果が出始めたことに湧いた。
そのとき、國生が持ち込んでいた大型の資料鞄が突如爆発し、艦隊司令部は壊滅的な打撃を受ける。
一時的に自衛艦隊に乱れが生じた。ゴジラはその隙をつくように、進路をふさぐ自衛艦を放射能火炎で
一掃すると、艦隊を振り切り一路東京湾を目指すのだった。

横須賀の護衛艦隊司令部に、頭に包帯を巻いた立見の姿があった。立見は手の中の小型発信機を
握り締め狂気の笑みを浮かべていた。
たちかぜの爆発は立見が國生の鞄に仕掛けておいた爆弾によって引き起こされたものだったのだ。
立見は「ゴジラよ、東京へ上がって来い!」と叫ぶのだった。ゴジラの被害が甚大であればあるほど、ゴジラ
対策部隊の重要度は増す。長い間冷や飯を食わされていた自分に、遂に隊の中で重要なポジションを
得ることが出来る千載一遇のチャンスが訪れている。 その想いが立見をこの狂気とも思える行動に駆り
立てていた。

その横須賀上空へ、怪獣が姿を現した。羽根の損傷によって完全な飛行が出来なくなっていた怪獣は
失速と上昇を繰り返していたが、艦隊司令部にさしかかった際、失速を起こして立見もろとも艦隊司令部
を破壊した。立見の断末魔の悲鳴は建物の崩れ去る音にかき消された。
そして怪獣は東京湾沖へと飛び去っていった。

遂に二体の怪獣は二度目の対決のときを迎えた。
ゴジラの火炎放射で残る羽根を焼き尽くされた怪獣は、海中に没するも、驚異的な海中機動性でゴジラ
を翻弄するのだった。

ヘリコプターでDDHあまぎりに降り立った河合と新田、そして途中から合流した中島は、怪獣対決を間近
から見守った。

二大怪獣の激闘は果てしなく続いた。二体の怪獣は激しく戦いながら、大戸礁海域の溶岩ドームへ
さしかかった。 海上へ飛び上がりゴジラに襲い掛かる怪獣。それを受けて放たれるゴジラ必殺の火炎攻撃。
ゴジラの放射能火炎の直撃を受けた怪獣は大きく吹き飛び溶岩ドームへ叩きつけられた。
そこへさらにゴジラの放射能火炎が放たれる。 冷え固まった溶岩部分を吹き飛ばされたドームはマグマを
噴出すと怪獣をそのマグマの中に飲み込むのだった。カプセルであった隕石の中ならば平気だった怪獣も、
放射能火炎とマグマの直撃には敵わず、再び海に沈んでいこうとするドームとともに海中に消え去る
のだった。

自衛艦隊に再び緊張が走った。ゴジラに向けて攻撃が再開されようとしていた。
だが、ゴジラは一声咆哮を上げると遥か太平洋沖に向かい静かに去っていった。自衛官たちは一様に
安堵のため息をついた。 去りゆくゴジラを追うかのように2隻の潜水艦の航跡が海上を2本の線のように
流れていたがやがてゴジラが戻ってくる様子が見えないと判ると、航行を止めゴジラを見送るかのように
海上に浮かび上がった。

河合は、何一つ判っていないゴジラのことを研究するために大学の研究室へ編入することを新田に
伝えると、新田は照れながら自分の学校に来るように河合に進めるのだった。

夕焼けが太平洋を染める中、整然と海上に浮かぶ自衛艦隊の遥か沖に泳ぎ去るゴジラの姿があった。

                                       2000.04.16 祝 二十郎

 


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